2023年1月31日、BYDオートジャパンは電気自動車での日本進出第一弾車種となる『ATTO3』の国内販売開始を発表するとともに、メディア向けに正規ディーラー1号店となる「東名横浜店」の内覧会を開催した。
日本国内約100店舗への第一歩
BYDは昨年7月の国内での乗用車EVの展開を発表して以来、販売計画やディーラー網の整備についてアナウンスを行っていたが、内覧会は、その予定通り国内第1号店のオープンも正式に発表した。内覧会には同社代表取締役社長 東福寺厚樹氏も駆けつけ「お客様、国内パートナー、スタッフのおかげで発表から6か月という短期間で店舗オープンができたことに感謝したいとともに、とてもわくわくしている」と挨拶を行った。
店舗は国内で輸入中古車を扱うアクセルグループが運営する。場所は東名高速道路、横浜インター至近、国道16号と246号の交差点付近。アクセルがすでに営業を行っている中古車ディーラーを改装する形でBYDの正規ディーラーがオープンする。それに伴い既存店舗もリニューアルオープンされる。営業開始は2月2日からだ。アクセルグループ 代表取締役社長 岡本二久氏も挨拶を行い「EV販売には正直不安もあったが、世界一プラグイン車を販売しているBYDとともに店舗を構えることができてうれしい。期待している」と述べた。
この場所は車でのアクセスもよく、新車ディーラー、中古車ディーラーが立ち並ぶエリア。公共交通機関は東急田園都市線 南町田グランベリーパーク駅から徒歩10〜15分ほど。急行も止まる駅で、駅前は大規模なショッピングモールやシネコン、商業施設が立ち並ぶ新興エリアだ。休日には多くの家族連れで賑わう。
BYDはすでに2025年まで国内100店舗程度のディーラー展開計画を発表している。内覧会では3月までに予定されている店舗計画のリストも配布された。1月31日現在の情報としては、開店準備室を含めてほぼ確実な店舗が33店。東福寺社長によれば契約済みを含めて進行中の店舗も30店舗程度あるという。数の上では70店前後が開店を予定している。残り30数店舗としても2025年までの目標達成が見えているようだ。
公表されているBYDディーラーリスト
都道府県 店舗名 形態
北海道 BYD AUTO 札幌 開業準備室
福島県 BYD AUTO 郡山 開業準備室
茨城県 BYD AUTO 水戸 開業準備室
茨城県 BYD AUTO つくば 開業準備室
栃木県 BYD AUTO 宇都宮 開業準備室
群馬県 BYD AUTO 前橋 開業準備室
埼玉県 BYD AUTO 熊谷 開業準備室
埼玉県 BYD AUTO 越谷 開業準備室
千葉県 BYD AUTO 柏 開業準備室
東京都 BYD AUTO 池袋 開業準備室
神奈川県 BYD AUTO 東名横浜 店舗
神奈川県 BYD AUTO 港北 開業準備室
神奈川県 BYD AUTO 横浜中央 開業準備室
富山県 BYD AUTO 富山 開業準備室
石川県 BYD AUTO 金沢 開業準備室
山梨県 BYD AUTO 山梨 開業準備室
岐阜県 BYD AUTO 岐阜 開業準備室
静岡県 BYD AUTO 静岡 開業準備室
静岡県 BYD AUTO 浜松 開業準備室
静岡県 BYD AUTO 沼津 開業準備室
愛知県 BYD AUTO 岡崎 開業準備室
愛知県 BYD AUTO 知多・刈谷 開業準備室
愛知県 BYD AUTO 名古屋東 開業準備室
愛知県 BYD AUTO 名古屋北 開業準備室
三重県 BYD AUTO 四日市 開業準備室
三重県 BYD AUTO 松阪 開業準備室
大阪府 BYD AUTO 堺 開業準備室
大阪府 BYD AUTO 堺(イオンモール専門店街) 店舗
大阪府 BYD AUTO EXPOCITY 開業準備室
兵庫県 BYD AUTO 神戸 開業準備室
兵庫県 BYD AUTO 西宮 開業準備室
岡山県 BYD AUTO 岡山 開業準備室
香川県 BYD AUTO 高松 開業準備室
沖縄県 BYD AUTO 沖縄 開業準備室
開業準備室は、BYDのロゴ看板や統一店舗デザインなどのショールームスタイルの制限がないが、BYD車両の商談、試乗などに対応する店舗だ。既存ディーラーの一角で営業される場合や仮店舗などが想定されるが、準備室の名が示すとおり、どの店舗も正式なBYDディーラーとしての営業に順次切り替えていく予定だ。配布資料から3月までに開業(開業準備室含む)予定の33の店舗リストを作成した。47都道府県には満たないが、北海道(札幌市)、四国(香川県)、沖縄(那覇市)にも開業準備室がリストされていた。
2月2日にオープンする「東名横浜店」には50kWのDC急速充電器が1基、AC200V 6kWの普通充電器が2基設置される。普通充電器はすでに設置済みだが、DC急速充電器は機材不足のため納品待ちの状態で開店には間に合わないようだ。正規ディーラーは最低1基の50kWのDC急速充電器の設置を目指す予定。現状、設置コストを考えると50kW以上の充電器の導入は難しいが、中国本社の推奨は40kW以上とされており、出力が足りないということはないそうだ。ただ、ATTO3は最大85kWでの急速充電性能をもっているので、将来的には90kW級以上の高出力器設置のニーズが高まってくることも想定できる。
興味を示すのは30代のファミリー層が中心
すでに試乗予約や商談の引き合いがきているそうだ。どのような人かをスタッフに聞いたところ、SUVということもあり30代ファミリー層が多いという。乗り換えも国産SUVを中心に輸入車オーナーも半分ほどだそうだ。店舗がオープンすると、実際の購入層がどうなるかはわからないが、若い世代が興味を持つのはEVならではだろう。気になる納車だが、メーカーとしては2月中、3月でも不可能ではないが、ユーザー側がCEV補助金の年度切り替えもあり、補助金枠が確実な新年度登録を希望することが多いという。
(編集部注/令和4年(2022)年度補正予算によるCEV補助金は、令和5年2月17日までに新車新規登録(新車新規検査届出)を行った車両については今年同様の補助金が交付されますが、令和5年2月18日以降登録の車両への補助要件はまだ発表されていません)
修理・メンテナンスについてアクセルグループの東名川崎店での対応となる。EV整備についてはBYDが明治産業と共同でトレーニングプログラムを実施している。正規ディーラーの担当者はすべてこのトレーニングを受ける。メンテナンス体制は今後の店舗ごとに変わってくるが、アクセルグループはすでに2号店の計画があり、そこは新しい敷地に単独のショールームを建てる予定だ。整備ピットも完備されるという。場所は横浜市の港北ニュータウン、センター北駅近くを予定している。ここはボッシュが日本本社の新社屋を建築中の再開発エリアだ。
モニターが回転するのはATTO3のユニークな機能。
最後に筆者が気になる点を確認してみた。これまで乗ることができた試乗車は完全な国内仕様ではなく、とくにナビが使えない状態だった。31日から発売される(展示されていた)車両はゼンリン地図の日本語対応ナビが搭載され、1号店の展示車両も日本語ナビになっていた。音声認識も日本語対応しており、サンルーフやシェードの開閉、ドアウィンドウやエアコン設定、オーディオの操作は日本語で試すことができた。
ただ、残念だったのは、ナビ画面の切り替えはできるが、目的地設定がまだ音声対応できていなかった。目的地の音声入力はOTAで対応予定があるということだったので、適宜のアップデートに期待したい。