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オフィス価格、大阪が世界15都市で上昇最大

日本のオフィスやマンションに世界の不動産投資マネーが集まっている。民間調査によると、10月時点でのオフィス価格の上昇率は大阪が世界の主要15都市で最も大きかった。東京も3番目に大きい。緩和的な金融政策や安定した賃貸需要が投資家をひき付ける。金融引き締めで売買が低調だった米ニューヨークや英ロンドンなどと明暗が分かれた。

不動産サービスの日本不動産研究所 (東京・港)が29日、「国際不動産価格賃料指数」を発表した。調査はアジア各国と米国、英国、オーストラリアの主要15都市を対象に半期ごとに実施している。オフィスおよびマンションの新規売買・賃貸契約に基づき、1平方メートル当たりの価格と賃料を算出する。

10月時点のオフィス価格は大阪が前回調査(4月)比2.1%高と、上昇率が最大だった。2022年10月以降、3期連続で上昇率がトップだ。ベトナム・ホーチミンが0.8%高、東京が0.6%高で続いた。

大阪は東京と比べてオフィス価格の水準が低い。投資家が求める投資利回り(キャップレート)は相対的に高くなり、投資家の売買が増えたようだ。日本不動産研究所によると、10月時点での期待利回りは大阪の梅田エリアが4.0%、東京の丸の内・大手町エリアが3.2%だった。

下落率が最も大きかったのは米ニューヨークで、6.0%安だった。豪シドニーが4.4%安、英ロンドンが3.5%安と続く。不動産会社の経営不安が相次ぐ中国では北京が2.9%安、上海が2.6%安だった。

日本と海外との値動きの差の背景にあるのが、金融政策の違いだ。

米国や英国、豪州などはインフレの抑制に向けて政策金利が段階的に引き上げられてきた。市場の長期金利も連動して上昇(債券価格は下落)し、不動産投資家の借り入れコストが膨らんでいる。現地銀行の貸し出し態度も厳しくなっているとみられ、不動産の売買を抑えた。

日本は日銀がマイナス金利政策を続ける。市場機能の回復を目指すとして長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を修正したものの、長期金利の上昇幅は欧米などと比べて限られる。不動産の取引を冷やすには至っていない。

オフィス需要も持ち直している。日本では経済再開(リオープン)に伴う企業業績の回復で、オフィスの移転・拡張需要が強まっている。

不動産仲介大手の三鬼商事(東京・中央)がまとめた10月の東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室率は6.10%と、2年5カ月ぶりの低水準となった。

賃料も持ち直しの兆しがある。日本不動産研究所の今回の調査で東京は横ばいだった。前回調査(4月)は0.7%安だったが、賃料調整が一巡したとみられる。大阪も横ばいだった。

この傾向が海外からの投資マネーを呼び込む。「特にアジアの不動産投資家が投資に積極的だ。日本のオフィス需要を全く悲観していない」(日本不動産研究所の吉野薫主席研究員)

一方、米国では在宅勤務・テレワークが定着し、オフィスに戻る動きが鈍い。米不動産サービス大手クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによると、23年7〜9月期の全米オフィス空室率は19.4%だった。

10月時点の賃料もニューヨークやロンドンは横ばい〜0.1%安にとどまったままで、需要回復が見えにくい。

海外の投資マネーは日本のマンションにも触手を伸ばす。10月のマンション価格は大阪が4月比2.7%高と首位だった。2位の東京は1.2%高と前回調査(4位)から順位を上げ、上位2都市を独占した。

市場では日銀のマイナス金利政策の解除が意識され、金利の先高観から不動産取引が冷え込むとの懸念も広がる。ニッセイ基礎研究所の佐久間誠主任研究員は「日本のオフィスやマンションで、金利上昇に見合う賃料上昇が進むかが焦点になる。投資マネーが流入し続けるかの分岐点になりそうだ」と話す。

(引用元)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB289SS0Y3A121C2000000/

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